静脈性潰瘍

杏林大学医学部形成外科  大浦紀彦
2020年度の診療報酬改定において、静脈性潰瘍に対する圧迫療法が創処置の項目に新設された。
圧迫療法の考え方と、静脈性潰瘍の創傷の観察のしかた(Triangle Wound Assessment)に関して資料をHPに掲載する。

静脈性潰瘍とは

静脈性潰瘍は、下肢静脈瘤などの静脈不全症(chronic venous insufficiency以下CVI)に起因する静脈性高血圧を伴った皮膚障害である。一次性下肢静脈瘤と深部静脈血栓症・血栓症後後遺症に分類される。

代表的な下腿静脈不全症の病態としては、深部静脈は正常であるが、交通肢から逆流が起こり表在静脈の鬱滞、逆流を生じ静脈瘤を形成する。静脈鬱滞によって軟部組織の組織間液も鬱滞し浮腫を伴って皮膚炎や潰瘍を認める。

内果または外果に色素沈着を伴って発症することが多い。潰瘍形成を繰り返す場合には、下腿1/3が瘢痕化し細くなり特徴的な形態となる。

治療の考え方

潰瘍に対する治療における基本的な考え方は、潰瘍が発生した原因の除去、環境の改善である。静脈性潰瘍;CVIの病態は起立による静脈高血圧なので、下肢を挙上することで病態は改善する。生活指導、圧迫療法は最も基本的な治療法である。一次性下肢静脈瘤では、表在静脈の除去、表在静脈への血液流入をさせないことが基本的治療であり、高位結紮術や下肢静脈ストリッピング術などの外科治療、硬化療法、血管内焼灼術などが適応となる。

混合性病変

しかし、静脈性潰瘍の中には、動脈不全;重症下肢虚血(CLI)を合併したものもある。虚血がある状態で、足部、下腿に手術創を加えると、その部位から壊死が拡大し、CLIの重症化を招くことがある。圧迫治療も同様で、弾性包帯による圧迫によるMDRPU(医療機器関連圧迫創)が生じ、広範な壊死となることがある。

圧迫療法を開始する前に、CLIを合併していないことをSPPやABIなどで確認することが重要である。CLIを合併している場合には、CLIの治療をまず優先する。

血行再建を施行してから、圧迫治療を開始する。動脈不全と静脈不全の混合性病変の場合には、血行再建後、末梢から心臓へ帰るルートがないため、下肢が腫脹することが多く、血行再建後に場合によっては蜂窩織炎を認めることがある。血行再建の前後で抗生剤の投与と下肢挙上などの安静が重要である。

圧迫治療においては、創がある場合は、弾性包帯を、創治癒後や静脈瘤を認める場合には、ストキングを使用する。高齢者で、足部まで手が届かない、巧緻性がない場合には、ファローラップ®などのベロクロで固定して圧迫するタイプを使用するとアドヒアランスが維持でき、再発防止につながる。

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