とよあしネットワーク
北和子

私が足に関わる様になったきっかけは、透析クリニックで勤務していた時のチーム患者さんからのたった一言、こんな言葉でした。
「足が痛いんだ・・・」。

その患者、Mさんは片麻痺があり杖歩行が可能でしたが巻爪に爪白癬、そして肥厚、横に向いてしまっている足趾が隣の足趾の横に当たり傷つけている事での痛みの様でした。その時の私はフットケア委員でしたが実際にフットケアはしておらず、会議にも参加していない幽霊委員でした。足に全く興味がなく、学会参加を誘ってくれる先輩Nさんには「足、興味ないんです。」という始末。たまたまあの日、Mさんの「痛い」という一言で自分もフットケア委員だった事も忘れ「フットケア委員の人呼んでくる!!」と先輩を呼びに行ったところから私のフットケア人生が始まりました。あいにくその日、フットケア委員スタッフは全員不在でした。その時思いました。「もし私がフットケアを出来たならば、この問題は今ここで解決する話ではなかっだろうか?」。それから様々な勉強会やスクールに通い、知識・技術を学び今に至ります。「痛い」と教えてくれたMさんの爪に初めてニッパーを入れる時には隣に教科書を置き、見比べながらニッパーを入れました。その瞬間の手が震えた感覚を今でも忘れない様にしています。

現在私はグループ内の異動で総合病院にいるのでMさんの体調が悪くなった時しか会う機会がありません。Mさんはリハビリに力を入れる為に療養型病院に入所して短下肢装具を作り替えたと教えてくれました。でも新しい装具と靴が合わず、もともと血流が悪かった事もあり足に壊疽が出来て血行再建目的で入院してきました。久々に見るMさんの足は新しい装具で出来てしまった壊疽は一部あるけれど、「見慣れた巻爪・グラインダーで削った痕のある肥厚爪、そしてしっかり保湿された皮膚・汚れの無い足」の状態でした。サテライトクリニックで日頃しっかりケアされているという事が分かり、医療者として関わる場所は変わっても、Mさんが通うクリニックでは元同僚達がしっかりMさんの足を見てくれているという事がとても良く分かりました。Mさんに関わる場所は違っても今も私が関わっていた時と同じ様にMさんの足やMさん自身を大切にしてくれていると思うと、本当に嬉しく思いました。

2016年に透析患者の下肢末梢動脈疾患の管理加算算定が開始となり病院間の連携について多くの病院が実施しています。病院間の連携だけでなく、同じ地域で働き同じ患者をみる看護師が顔の見える連携をする事で入院前~入院中~退院後、そして患者が生活の場に戻ってからの足ケア介入、社会資源の活用・調整、家族のフォローなど、途切れる事なく関われる素晴らしさを今回のMさんの症例を通して実感しました。みる場所・みる人が違っても同じ様な知識・技術・アセスメント・ケアが受けられる。そして職種や職域、施設を超えて地域全体に足の啓発の輪が広がったら、まさに今、今日、他院から入院された以前から足が原因の入院を繰り返す患者さん達の足が目の前で切断されると言う悲しさは確実に少なくなっていくのではないかと切に思います。

多くの足病変・そして全力で介入してもやむなく切断する足もたくさん見てきました。一度出来た足病変を改善すると言う事の難しさを知る程、予防への介入がとても大切だと実感しました。そこで、足に関わる周辺の足仲間と共に、医療者として病院にいるだけでなく、地域市民の足病予防の啓発を行う様になりました。現在では「地域市民の足を守ろう!」を合言葉に、地域行政・患者会・多職種の仲間達と協働して足の啓発活動を行う「とよあしネットワーク」というサークルを母体として様々な活動しています。毎年行う市民イベントのアンケート結果は行政にフィードバックし共有する事で、市民の傾向を知り今後は市の健康政策にも具体的に協力出来たらと考えています。

1人の患者さんとの関わりからはじまった小さなフットケアサークル活動です。今後も地域全体を巻き込んで多くの市民の歩ける足を守るお手伝いが出来る事を目指していきたいと思っています。