プライマリーケアにおける足の診察方法
-AAA3分間足病チェック―

下北沢病院 糖尿病センター 富田益臣
杏林大学医学部形成外科 大浦紀彦

糖尿病患者の足を定期的に診察して、足潰瘍や切断のリスク因子の有無をチェックすることは糖尿病診療ガイドラインにも明記されています。アメリカ糖尿病学会では包括的な足のアセスメント方法とリスク分類を提示しています[1]。Armstorngら[2]はプライマリーケアでの簡易的な3分間の足の診察方法を提唱しました。これを許可得て日本の状況に合わせAAAスコアの内容も含めて改編したものが「AAA3分間足病チェック」です。

1:病歴聴取(表1)(1分間)

糖尿病足病変のリスク因子の有無を聴取する。糖尿病足病変の最大の予防は血糖コントロールであるため、過去の血糖コントロールや細小血管合併症などの糖尿病の病歴を確認するとともに、血管内治療・バイパス術などの末梢動脈疾患への治療歴、足の痺れや灼熱感などの糖尿病神経障害の陽性症状、下肢の防御感覚の低下などの陰性症状の確認、また潰瘍・切断の既往歴を確認する。血糖コントロール不良の罹病期間の長い糖尿病患者では足の防御感覚が喪失や難治性の潰瘍を有する可能性があり、注意深く問診を行う。また喫煙状況についても確認する。AAAスコアにおいて最も重みづけが重い項目である網膜症による視力低下も確認する。

2:足の診察(表2)(1分間)

糖尿病患者や糖尿病が疑われる患者では、診察毎に足の注意深い診察を行うことが理想であり、皮膚や神経、血流、筋骨格系を含めた足の診察を適切に行う必要がある。なぜなら神経障害を有する糖尿病患者の50%以上は無症状であり、感染やひび割れ、前潰瘍病変、皮膚温の変化、血流障害などの兆候に気がつかない可能性が高い。
皮膚の評価
足の全体を観察し、皮膚の変色や胼胝、鶏眼、創傷、亀裂、浸軟、爪の変形、陥入爪などの有無を確認する。皮膚の変色や足趾の毛の喪失は血流障害の可能性がある。一方、胼胝や肥大した皮膚は前潰瘍病変の可能性がある。そして足趾や趾間を注意深く観察して、白癬などの真菌感染や肥厚爪の有無を観察する。

神経学的評価
糖尿病神経障害により足の防御感覚を喪失した患者では、無自覚の外傷のリスクが高く、また自身の足趾の変形を医療者に伝えない可能性がある。そのため医療者が気づかないうちに潰瘍や切断へ進む可能性がある。神経障害による足の防御感覚の喪失は診察により容易にみつけられる。振動覚閾値の測定は、足の防御感覚の喪失の早期発見に適した検査であるが、高価であり、また検査時間もかかる。Semmes-Weinsteinモノフィラメントや128Hzの音叉は振動覚閾値の代わりに世界中で用いられているが、購入や手技の習得が必要であり、さらにSemmes-Weinsteinモノフィラメントは定期的な交換が必要である。これらの代わりに指だけで行う神経障害の検査方法であるIpswich試験が推奨されている[3]。

筋骨格系評価
糖尿病患者の足底腱膜やアキレス腱は肥厚している。そのため足関節の背屈や底屈は減少し、関節可動域が制限されている。そして足趾の変形やバニオンは疼痛や歩行障害の原因となり、潰瘍のリスクでもある。そのため足趾の変形を有する糖尿病患者では、整形外科などへのコンサルトも重要である。またシャルコー関節症の早期発見のために、足の発赤や熱感を認めた場合にも単純X線写真を撮影し、専門家にコンサルトする。

血流評価
末梢動脈疾患は糖尿病患者にみられる合併症である。そのため、両側の大腿、膝窩、後脛骨、足背動脈の拍動を確認する。

3:フットケア教育(1分)

患者教育は糖尿病診療において非常に重要である。フットケア教育を行うのは医師や看護師だけではなく、糖尿病診療に関わる全ての医療者が行う必要がある。例えば、栄養指導や服薬指導、またインスリン導入などの際にも、歩き方や靴に注目し、足の話をする。周囲の医療者全てが繰り返し説明することが患者の足への考え方が変わっていく。
長くつや安全靴の使用もリスクである。教育は、患者の足への注意を増加させ、自宅でのセルフケアを改善させる。糖尿病に関わる適切な教育の欠如が、再発する潰瘍の重要な要素であるという報告もあり[4]、全ての糖尿病患者には足に関わる教育を生涯に渡り受ける必要がある。

いつ、誰にコンサルトするか[2] AAA3分間足病チェックを行なった後は治療とフォローアップ計画を立てる。特に傷を有する患者や急性期シャルコー関節症の患者ではすぐにコンサルトが重要となる。

引用文献
1. Boulton, A.J., et al., Comprehensive foot examination and risk assessment: a report of the task force of the foot care interest group of the American Diabetes Association, with endorsement by the American Association of Clinical Endocrinologists. Diabetes Care, 2008. 31(8): p. 1679-85.
2. Miller, J.D., et al., How to do a 3-minute diabetic foot exam. J Fam Pract, 2014. 63(11): p. 646-56.
3. Rayman, G., et al., The Ipswich Touch Test: a simple and novel method to identify inpatients with diabetes at risk of foot ulceration. Diabetes Care, 2011. 34(7): p. 1517-8.
4. Assaad-Khalil, S.H., et al., Prevalence of diabetic foot disorders and related risk factors among Egyptian subjects with diabetes. Prim Care Diabetes, 2015. 9(4): p. 297-303.

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